千葉県下における産業保健活動支援社外資源の

利用状況と満足度に関する調査

 

主任研究者 千葉産業保健総合支援センター 産業保健相談員  本吉光隆

共同研究者  千葉産業保健総合支援センター      所長  安達元明

千葉産業保健総合支援センター 産業保健相談員  能川浩二

千葉産業保健総合支援センター 産業保健相談員 大久保靖司

千葉大学大学院環境労働衛生学    講師  小林悦子

千葉大学大学院環境労働衛生学    助手  諏訪園靖

 


1 はじめに

産業保健推進センター(以下センター)の利用者は固定化する傾向にあるように思われるため、産業保健推進センターの利用状況と認知の状況を調査し、産業保健推進センターに対する新たなニードを明らかにし、センターがより一層利用しやすいセンターとなるための活動計画の策定する上での活動の的確な選定および活動を有効に活用されるための実施方法に関しての基本的な情報として活用することを目的に今回の調査を実施した。

2 対象及び方法

 対象は、千葉県下で産業保健または労働衛生活動に従事している産業医600名、衛生管理者200名および産業看護職200名である。

調査方法は質問紙法を用い、職種、資格、労働衛生活動従事歴、勤務年数、事業場規模および雇用形態を調査した。続いて、センターの活動内容の周知状況、センターおよびその他の産業保健活動支援社外資源の活動の利用状況、産業保健に関係した情報の入手源、産業保健活動支援社外資源への問い合わせの手段、産業保健活動支援社外資源の各活動に対する満足度、産業保健活動支援社外資源の活動に対する総合的な満足度および産業保健推進センターの各活動に対する要望についてである。対象者に対して、郵送で質問紙を送付し、2週間を期限に回収をした。その時点で、回答を送付していない対象者に対して、回答を電話にて依頼し、回収率の向上を目指した。

3 結果

 回収は、産業医230人、衛生管理者124人、産業看護職120人から得られ、合計474人回収率47.4%であった。

産業保健推進センター活動の周知状況

 産業医にとってもっとも知られている活動は、講習会、機関紙の発行、相談窓口の順であった。衛生管理者にとっては、講習会などの開催がもっとも周知されている活動であったが、電子メールによる相談窓口は18%と周知の度合いは低かった。産業看護職においては、全般に周知の度合いは高く、講習会の開催、機関紙の発行、図書機材の貸し出しは80%以上が知っていていたが、電子メールによる相談窓口の周知状況は最も低かった。

機関別の支援活動の利用状況

 相談窓口として利用されたことのある機関としては、センター、地域産業保健センター及び労働基準監督署または労働局であり、産業保健従事者が相談する機関としてセンターが機能していることが示唆された。機関紙ではセンターの機関紙を利用したことがあるのが30%であり、もっとも利用されている機関紙であることが示された。ホームページに関しても、センター以外の利用率はきわめて低く、また、センターのホームページの利用も10%と低い利用状況であった。講師の派遣に関しては全体で50%程度と周知状況も良いとはいえない状況であり、全体に講師派遣、斡旋の利用状況は低く、センターのこの活動の利用者は対象者の6%に留まった。

産業保健に関する情報源の利用状況

 利用する情報源として最も頻度の高いものはインターネットによる検索であった。それ以降、書籍類、産業保健推進センター、医師会の順であった。

利用時の連絡方法 

 産業保健活動支援社外資源の利用時の連絡方法で、もっとも頻度の高いものは電話であり、次いで訪問、ファックスであったが、電子メールの利用は低かった。

機関別支援活動に対する満足状況

 相談窓口に対する満足状況はセンターで20%であり、労働基準監督署の12%、医師会の9%よりも高かったが、十分な満足状況とはいえない状況であった。講習会などの満足状況では1/3が満足としていた。大会や講演会では満足はその半分程度となり、機関紙では1/4が満足としていたが、ホームページや講師の派遣斡旋はそれぞれ5%、4%と満足とする対象者は少なかった。

総合的な満足状況

 産業医の利用度の高い上位は、センター、地域産業保健センター、医師会、労働基準監督署など、大学の関連教室などであった。衛生管理者の利用度の高い上位は労働基準監督署など、労働基準協会連合会、センター、中央労働災害防止協会、企業外労働衛生機関であり、産業医とは利用度の高い機関は異なる。産業看護職ではセンターは、利用度の高い機関であり満足度も高かった。産業看護職にとって地域産業保健センターの利用度は低く、これらのことは今後の課題となると考えられた。

産業保健推進センター活動に関しての要望の集計結果

 相談窓口に対する要望としては、曜日などを限定せず毎日受け付けてほしいが最も高い要望であった。それ以外では受付時間の延長、回答までの時間の短縮、回答の質の向上など相談窓口業務全般の一層の質の向上が期待されていた。また、連絡先の周知の徹底の要望もあり、一層の相談窓口の周知を図る必要があった。

講習会や講座に関しては、開催日時・場所の多様化、開催案内の周知、具体的な内容を要望する意見が多かった。機関紙に関しては、比較的に現状に対して肯定的であったが、ホームページでの公開などに関しての要望が多かった。講師派遣斡旋に関しては、講師の数・質ともに比較的に現状に肯定的であったが、各講師の講演テーマの一覧表などの提供に対しての要望は高かった。

4 考察

 センターの今までの活動を通じ、利用者は増加してきたが、更なる利用者の掘り起こしと地域における産業保健活動の向上のために、あらたな活動も行わなければならない時点に差し掛かっていると思われる。

今回の調査では、センターが力を注いできた相談窓口や講習会・講座の周知や満足度は一定の成果を上げ、事実、地域におけるこれらの活動の中心となっていることが示されが、満足度は十分に高いとは言えず、一層の改善が必要であった。要望あるようにインターネットなどの新しい通信手段への対応とその広報が課題であり、さらに講習会や大会などの開催日程時間の多様化、内容の一層の吟味も課題である。

今回の調査での特徴は、産業看護職における周知状況は高いことが挙げられる、一方、衛生管理者における周知状況は他の職種に比べて低く、企業・事業場単位もしくは安全衛生部門単位へのアプローチを定期的に実施する必要があると思われた。

センターが、今後も地域の産業保健活動の支援機関としての中軸を担うためには、ニーズの的確な把握とそれに合った目標を定め、状況に合わせて柔軟に活動を展開していくことが必要であると考えられた。