独立行政法人 労働者健康安全機構 千葉産業保健総合支援センター

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ちば産保コラム

  • ある日の診察室から気づかれるようになった「発達障害」

    相談員コラム

    産業保健相談員 精神科医 西尾 正人

     

    Aさんは、私のクリニックに通い始めて10年になる。

    あるこだわりもあって、人間関係がいつもうまくいかなくなり、仕事場でも、家庭でも悩み苦しむ。家庭ではともかく仕事場は転々としてしまう。昔は学校も中退してしばらくひきこもっていた。

     そのAさんに前回の診察で「発達障害」という診断を告げた。「先生、ネットで調べたんだけど書いてあることが、私にそっくりだなと思いました。」「でも先生、なぜ今まで私が発達障害だと分からなかったんですか?」とAさんが訊いてきた。 「申し訳ないけれど、精神医学でこういうことが言われるようになったのが、最近でね。」 「しかも、本に書かれていても、しばらくピンとこなかったんだ。」と汗を拭き拭き答えたのだが、Aさんはにっこりして「そうですかぁ、しょうがないですね。」 「ずっと小さい時から、なぜ私は他の人たちと違うのだろうかと考えてきたので、やっと分かってほっとしましたよ。」 と言ってくれました。私がAさんにしてきたのは、なるべくゆっくり家庭や、職場での話を聴き、最後に「よくやっているね」 「元気でまた会おうね、待っているから」と声をかけてAさんを診察室から送り出すこと。そして、量は多くはないが抗うつ薬、抗精神病薬・抗不安薬・身体の訴えに対する薬など、前医とあまりかわりばえのしないものを処方している。

     でも、この頃のAさんは、人間関係の悩みを語るものの、職場を転々としなくなった。

    成長して自分でうまくやっている。

     最近「発達障害」や「アスペルガー症候群」「自閉スペクトラム障害」等の言葉が一般にも知られるようになってきた。

    職場のメンタルヘルスでも「休業したうつ」を問題にしていたら、実は「発達障害」という話が、あちこちで出てきている。

    産業医や担当医がこのような方々の特性に気づいて作業環境を調整した結果、復職がうまくいっているケースもあれば、担当医が診断書に「うつ」と「発達障害」を併記したところ、解雇されていまい、訴訟になっているケースもある。Aさんの言葉を噛みしめながら、悩むところである。