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 23.2.14 Q&A

Q.健康診断結果に基づいて、精密検査の受診を産業医が勧告する場合、その受診に要する医療費、診断書料、交通費は、誰が負担すべきなのでしょうか?

A.

事業者が行う定期健康診断には、以下の2種類があります。

(1)特殊健康診断(有害業務に従事する者に主に年2回行う職業病検索の健康診断で酸を取り扱う者への歯科健診を含む)。行政からの指導勧奨による法定外の特殊健康診断もある。

(2)一般健康診断(定期健診としての年1回のものと、特定の業務に従事する者への年2回のもの、および臨時のもの)。

産業医が従業員に指示して精密検査を受診させた場合には、このどちらかによって扱いが異なります。

特殊健康診断は、精密検査が必要な健診は多くの場合は「二次検査」として位置づけられており、この費用負担は事業者と定められています。受診も業務の一環とされていますので所定労働時間内に行うこととし、時間外で実施した場合は割増賃金を支払う義務があると明記されています【昭和47.9.18基発第602号】。

したがって一次健診だけでなく二次健診の受診でも賃金の支払いは必要です。これはパート職員でも同様です。受診が業務の一環であると定められているので、交通費も含めて事業者負担であり、病院への出張業務であると解釈できます。

ただし指導勧奨による特殊健康診断は、このような規定はなく、職業性の原因に特異的な疾患がないことも多いので、精密検査を保険診療として一部を従業員負担としておき、もし職業性の疾病がみつかれば全額社費や労災保険に切り替える、という対応が多いようです。この従業員負担分を最初から会社負担としておく事業者もあるでしょう。

実際には、従業員負担があると精密検査の受診率が低下してしまう危険性があると考えられるため、発がん性物質などが含まれる特定化学物質など法定の特殊健康診断では必要な二次検査を遺漏なく受診してもらうために事業者負担とされています。

非特異的な疾患が含まれる指導勧奨による特殊健康診断の精密検査をどのように位置づけるかは、産業医の意見も踏まえた事業者判断となります。

一般健康診断のほうは、一般的な従業員の健康の確保のために行うものであり、実施義務は事業者にありますが、受診のために要した時間は事業者負担でなくても良く、労使で合意すれば良いとされています。

しかし通常の定期健康診断の部分(一次健診)の労働時間はパートも含めて事業者負担が望ましいとされています【昭和47.9.18基発第602号】。こちらの精密検査については、【健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針】で扱いが示されており、受診に要した時間は労働時間としなくてよいとされています。

ただし、特殊健康診断の二次検査と同時に精密検査を受診させる場合は、特殊健康診断のほうが業務扱いになり自由診療になるため、賃金の支払い義務が発生するとともに、全部の検査が自由診療として事業者負担となります。これは医療機関では保険診療と自由診療の混合診療が禁止されているため、混在する場合は全てが自由診療になるためです。

なお、検査費用については、一次健診で一定の健診結果であれば労災保険を用いた二次検査(二次健康診断等給付)を受けることができます。この場合は、受診費用は全額が労災保険での給付となりますので所定の手続きを行う必要があります。

一般健康診断の有所見者で、二次健康診断給付に該当しない場合の要精密検査であり、特殊健康診断の二次検査・精密検査と一緒の受診ではない場合は、受診料・検査費用は全て保険診療と一部自己負担となります。

事業者は一般健康診断の結果から精密検査指示があった方に受診勧奨して、検査結果を産業医に提出することを勧奨することとされています【健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針】。事業者ができるのは受診や提出の勧奨までなので、その費用を事業者が負担するかどうかは事業者の判断で良いのです。

一般健康診断の有所見者については、メタボリック症候群に対する特定保健指導の例をみてもわかるように、基本的に自己責任の割合が高い生活習慣病の部分ですから、自己負担があっても良いと思われます。ただし長時間労働が関与すると過労死に危険因子にもなりますので、なるべく自己負担を避けて受診率を高めたいところです。

そのような観点から労災保険を用いた二次検査というのは、頚部動脈肥厚検査や心臓超音波検査などができ、診断基準からも1回だけの検査だけでは何も診断できない一般健康診断項目の2回目検査という意味付けもあるので、有効に活用してもらいたい制度です。